11 月 29 日、参議院会館で開催された院内集会は、国会開催の合間を縫って 22 名の国会議員と 20 名の秘書が参加。選択議定書批准を待ち望む市民や地方議員も、会場とオンライン併せて 130 名を超える参加があり盛況のうち終了しました。

■秋月弘子CEDAW委員から
開会にあたって、女性差別撤廃条約実現アクション顧問赤松良子さんからのあいさつとして、選択議定書の1日も早い批准を望む強いメッセージがあった後、第1部は、現在、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の委員として活躍する秋月弘子さん(亜細亜大学教授)からの報告となりました。個人通報制度と調査制度からなる選択議定書が 1999 年に採択された経過から始まるわかりやすい解説でした。
条約の採択から 20 年が経った 1999 年に新たに採択された選択議定書は、権利侵害された人たちを実効的に救済するためのしくみとして不可欠なものであること、個人通報制度の受理には要件があり厳格に判断されていることなどの説明がありました。特に、ロビイングや議会でも質問の多い「国内司法と異なる勧告が出た場合」について、「司法判断を覆すものではなく、人権的視点での見解を示すものであること」、「勧告を受けた国も権利侵害が社会的な差別構造に基づくものであるということを受け入れ改善策を講じていること」等が、具体的事例を示して説明され、聴く側にとっても心強い内容でした。
実際の個人通報数は 2022 年 10 月現在で 187 件、登録済みの 155 件のうち 59 件が受理可能、32 件が侵害あり、5 件が侵害なしという結論です。未登録や未審査の数が多いのは、それだけ丁寧な審査と議論が行われている表れともいえます。
委員会が行う調査制度は、「重大、または、組織的な」侵害が行われていることを示す信頼できる情報を受理した場合に、条約締結国への調査や訪問を行い、国の見解が出たときに公表するというもので、これまでに 7 件が公表されているとのことです。
人権に敏感な国のほうが制度を活用し、女性差別の問題が解決すれば、ほかの人権問題も大きく前進していくことが期待されており、日本政府は「20 年間の検討期間」に決着をつけるとき、という秋月さんの指摘は、多くの人が共感できるものでした。
■地方議会での意見書採択~滋賀県議会、神奈川県中井町議会、東京都目黒区議会から
第2部では、全国の各地域から選択議定書批准を求める意見書採択運動の報告がありました。滋賀県議会への働きかけについては、嶋川まき子さんから報告がありました。WWW(ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク)の取り組みですが、きっかけは今年 3 月 8日の国際女性デーの夕方、寒さ深まる大津駅前で足を止める人もない中、遊説をしている女性県会議員を見かけ嶋川さんが声をかけたこと。後日あらためて意見書提出のことを相談、各会派を回り全会一致で可決にまでこぎつけた経緯からは、女性議員が鍵を握ってい
ることがよくわかりました。
続く神奈川県中井町議会は、町議会議員の加藤久美さんからの報告で、東京都に次いで全国で 2 番目に女性議員の比率が高いにもかかわらず選択議定書の意見書採択がなかっ神奈川県で、第 1 号の意見書提出となった奮闘ぶりが語られました。6対4での賛成多数による可決という結果からも窺えるように、提出するまでの壁やベテラン議員の声の大きさの影響などを打ち破る熱意があったことがわかりました。
最後に、東京都目黒区のめぐろジェンダー平等の会代表の中島みち子さんからは、市民によるアンケートや学習会、ロビイングなどの丁寧な議員への働きかけが、自民党の女性議員を動かし全会一致にこぎつけた様子が報告されました。

参加したある国会議員の発言に、「秋月さんは 189 か国ある女性差別撤廃条約批准国のなかで 23 人の一人として選ばれているCEDAW委員の一人であり、世界のジェンダー平等推進に大きく貢献している女性。その日本が選択議定書を批准していないなんて!」という声がありました。11.29 院内集会は、長期政権を誇り世界の人権保障をリードしていかなければならない与党自民党や党公約に選択議定書批准をあげている公明党の国会議員にも聴いてほしい多くの示唆に富む内容であったと感じつつ会を終了しました。